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  映画『リトル・ロマンス A Little Romance 』(1979)は…『明日に向かって撃て!』、『スティング』で知られるジョージ・ロイ・ヒル監督による青春映画の傑作です ♪ 今や名実ともに大女優のダイアン・レイン  Diane Lane のデビュー作でもあります ♪ 私が最初に見始めた映画のひとつで、十代前半の主人公たちの初々しさと、老年のいぶし銀の名演技で脇をささえるローレンス・オリビエ Laurence Olivier の素晴らしさが今も記憶に深く刻まれています ♪ 音楽は、これまた 1960 年代のヌーベルバーグ Nouvelle Vague のフランス映画の数々から、のちには『ツインズ』、『フォー・エバー・フレンズ』などのハリウッド映画まで手掛けていく映画音楽の名作曲家 ジョルジュ・ドルリュー Georges Delerue が担当…♪ 当時、欧米でベストセラーになっていた、作家パトリック・コーヴァンの小説を映画化したもので、パリで巡り逢い、惹かれ合った2人の少年少女が謎の老人から聞かされた伝説に導かれるように , 、ヴェニスのため息の橋の下でキスをして永遠の愛を誓おうとする…現代のおとぎ話 ♪ メインテーマには  Vivaldi ヴィヴァルディのギター協奏曲の美しい緩徐楽章が使われて、みずみずしいロマンチックな雰囲気を醸し出しています ♪ この映画でアカデミー賞のオリジナル作曲賞も獲得しているジョルジュ・ドルリュー Georges Delerue  の作る…それ以外の音楽も、丁寧で職人的な佳曲ばかりで、映像と音楽が相まって楽しめるとても素敵な作品です ♪ この作品にふれるたびに、映画と音楽とのいちばん美しい関係について、いつも…ハッと気づかされるようです ♪
寡作で知られるブラジルのシンガーソングライター Edu Lobo エドゥ・ロボ…は、けれども、その作品、アルバムのすべてに行きわたっている〈質 Quality 〉の高さから、ブラジルポピュラー音楽のレジェンドのひとりに数えられています ♪ Elis Rezina エリス・レジーナ や  Sergio Mendes セルジオ・メンデスに取り上げられたスタンダード“ Upa Neguinho ウパ・ネギィーニョ ” , “ Reza 祈り ” , スパニッシュ ( スペイン的≓フラメンコ的 ) なサウンドを感じさせる“ Casa Forte 要塞 ”…など数多くの名曲を生んでいます ♪ 私が個人的に忘れられないのは、ボサノヴァギターの神様… Baden Powell の世界的スタンダード・ナンバー“ Berimbau ビリンバウ ”を、彼が自身ギターと歌だけでカバーする映像を観たときに感じた衝撃です ♪ 今までに見聞きした…どんなカバーバージョンよりもはるかにスマートで緻密なコード付けとギターのバチーダ ( 爪弾き ) は、シンプルに〈凄い… ! 〉と思わされるのに十分でした ♪ 私が大好きなのは 1980 年のアルバム『 Tempo Presente テンポ・プレゼンチ』…♪ 自分もいつか、こんなトータルなサウンドイメージでアルバムをつくってみたい…と憧れます ♪ 歌手としても素晴らしく…その声と歌を存分に聴かせる 1995 年のアルバム『 Meia Noite ( メイア・ノイチ…〈真夜中〉の意味 ) 』でも、私の愛する珠玉の名曲 “ Candeias カンディアス ”を聴くことができます ♪
想像 Imagination …というのは、あらゆる芸術にとって、もっとも大切な要素のひとつだと思えます ♪ 日本語の場合、〈想像=創造 Creation 〉と同音異義語になっていることも、なにやら意味深に感じられます ♪ 作曲や編曲において、まずはなにより…この〈 想像する Imagine 〉ということから、すべての作業が始まります ♪ 亡くなった私の作曲の恩師が「いちばん大切なのは“ 楽想 ”…」だと話してくれたことや、 Mozart モーツァルト の半生を、まさに想像力豊かに描いた映画『アマデウス』で、主人公の  Salieri サリエリが Mozart の書いた楽譜を見て「書き直した跡がない…書く前にアタマのなかで出来上がっているのだ…」と言って感じ入るシーンを思い出しますけれども、自分自身のことで言うと…完成しているというよりは、想像できている大きなイメージ Image があって、それを現実の演奏のために楽譜などに落とし込む…というのが実際のところです ♪ 美術や文学の分野でもいえることだと思いますけれども、この…事前に〈アタマのなかにある大きなイメージ〉というのは、実際の音や演奏の限界を超えているようなこともしばしばで、それを泣く泣く…楽器や人間の演奏能力の可能性の制約のなかで折り合いをつけて具体的に表現する、というのが〈作リ手の仕事〉になるのだと思います ♪ この想像=イメージ Imagine をしているときは、なにものにもとらわれず…まるで全宇宙をかけまわっているような感覚にも似た、本当にこころからの自由を感じられる…とてもしあわせな(つらく、かなしい…こともありますけれども…)気持ちになります ♪ このイメージ Imagine が自分にとって〈いい〉と思えれば思えるほど…あとにつづく譜面書きやコンピューターなどによる作業の大変さにも、なんとかその仕上げにむけて耐えることができるのです ♪  ( とりとめのない話…作曲編曲編? )
Journey ジャーニーは USA を代表するロックバンド…♪  1970 年代の西海岸ロックサウンドを牽引するバンド〈 Santana サンタナ 〉から派生したグループで、ギターの  Neal Schon , キーボードの  Gregg Rolie を中心に活動… 70 年代後半にボーカルの  Steve Perry の加入を機にポップヒットを出し始め、スタンダードになる“ Open Arms ” , “ Separate  Ways ”などのヒット曲を生み出しています ♪ Journey は、私のもっとも早い時期のロック体験の 1 つと言っていい…中学生の頃の記憶と深く結びついています ♪ 1981 年…その素晴らしいオルガンのサウンドで長年バンドを支えたキーボードの Gregg Rolie  が Jonathan Cain と交代した最初のアルバム『 Escape 』のリリースにあわせた来日公演を中野サンプラザで聴きました ♪ ジャズ・フュージョンのフィールドでも活躍するドラムの  Steve Smith … そしてベースの Ross Valory  もふくめてバンドのアンサンブルは素晴らしく、その後の大躍進は十分に予想される…とてもいいライブだったのを鮮明に記憶しています ♪ そのアルバム『 Escape 』の冒頭を飾る“ Don’t Stop Believin’  ”での Neal Schon のギターの反復フレーズは当時のロックギターの教科書的なショーケースでした ♪ アメリカでは 1981 年当時すでにスタジアム規模でしかライブをしない存在だった彼らを 2000 人規模のコンサートホールで聴くことが出来たのは今ふり返ってもとてもラッキーで、日本ならではのことだったと思います ♪ 私が今でも大好きなのは、当時のライブでいつも最後に演奏していた 1980 年のヒット曲“ Any Way You Want It お気に召すまま ” での華麗なロックコーラスサウンドです ♪
夏の陽ざしが少しだけ翳りを見せる昼下がりの午後…ふと思い浮かぶのが Miles Davis の アルバム『 Walkin’ 』で聴くことができる“ Solar ”です ♪ シンプルな曲の構造からは、まるで太陽が次第に動いていくような小刻みな転調が見られて、曲名のイメージを感じさせます ♪ Miles  の少し哀愁を帯びたスマートでなめらかなミュートトランペットのフレーズが、本当に…陽ざしが傾いて翳っていくようすを描き出していくようです ♪ ほかにも Bill Evans Trio による素晴らしいライブ演奏を名高いヴィレッジヴァンガードのライブアルバム『 Sunday At The Village Vaunguard』で聴くことができます ♪ 私のお気に入りは  John Abercrombie, John Scofield 2人の ギタリストによる曲と同名のアルバム『 Solar 』での疾走するような、とってもスリリングなバージョン… ♪
James Ingram ジェームズ·イングラム…は1970年代末から1980年代の Quincy Jones の制作した作品のボーカルサウンドを…そのSoulful な歌声で担っています ♪その歌声の素晴らしさを存分に発揮する名曲 “ Just Once ” をふくむアルバム『 The Dude 』からのシングル “ One Hundred Ways ” ではグラミーのR&Bベストボーカルパフォーマンス賞を獲得…♪ Michael Jackson のアルバム『 Thriller 』では作曲家として“ PYT ”を提供しています ♪ 彼のファーストアルバム『 It's Your Night 』(1983) は、その Quincy のプロデュースのもと最高のミュージシャンたちが集められ…ていねいに作られた、とても優れた作品です ♪ このアルバムがサウンド面からも価値があるのは…時代的に生演奏の録音からコンピューターでの打ち込みによるトラック作りへの過渡期に当たり、ドラムマシンやシンセサイザーによる機械的なビートと生の演奏による人間的な Groove グルーブとが、ともに相まって用いられ比類のない独特なテイストを醸し出していること… ♪ Michael McDonald とのコラボレーションで、ともにグラミーのR&Bベストボーカルパフォーマンス賞を獲得した “ Yah Mo B There ” をふくむ収録曲のなかで、なんと言っても白眉なのは…アルバム最後を飾る、Alan & Marilyn Bergman と Michel Legrand の素晴らしい作詞作曲、“ Baby, Come To Me ” につづく Patti Austin とのデュエットによる…その後スタンダード·ナンバーになる “ How Do You Keep The Music Playing ( 君に捧げるメロディー ) ”…私の、こころから愛する1曲です ♪
エポックメイキング epoch−making なこと…というのは、どの分野にも共通してあると思いますけれども…音楽もその例外ではありません ♪ 古くはBach バッハ、Beethoven ベートーヴェンのような歴史に残る作曲家の作品や、ここ何十年のことでも The Beatles ビートルズや Reggae Music レゲエなども同じようにその例だと言えます ♪ 今回は…19世紀と20世紀とを分けた音楽とも思える フランスの作曲家 Debbusy ドビュッシー の代表的な名曲、“ 牧神の午後への前奏曲 Prélude pour ‘ l' après-midi d’un faune ’ ”の特徴的な和音のお話を…♪ 冒頭のフルートの印象的なフレーズが落ち着くところの和音は…白鍵をシレファラと押さえた響きと同じ構造で、ハーモニーの用語では〈Ⅶ度(ななど)の七の和音〉と言われるものです ♪ この響きはその後の20世紀の音楽全体に多く行き渡ってよく見受けられ…曲の中での一時的な転調の契機として多く使われていることがわかります ♪ それ以前の19世紀の西洋音楽で比較的に多く使われていた〈□dim7(減七の和音)〉に代わって1900年代からポピュラー音楽もふくめて多く使われるようになります ♪ 〈□dim7(減七の和音)〉が Wagner ワーグナーなどに象徴される19世紀的な響きだとすると…近代フランスの作曲家 Debbusy ドビュッシー や Ravel ラヴェル などに多く見られる〈Ⅶ度(ななど)の七の和音=□m7♭5th〉はとても1900年代=20世紀的な和音の響きだと言えます ♪ ( 作曲編曲よもやま話…? )